フレイル と 認知症(中尾 圭一)
フレイル って なに?
皆さんは、フレイル という言葉をご存じでしょうか。
フレイルとは、一般の人にはまだ聞きなれない言葉で、医療従事者以外の人は、おそらく初めて聞いたという人も少なくないのではないでしょうか。フレイルとは 医学用語である「frailty(フレイルティー)」の日本語訳で、病気ではないけれど、年齢とともに、筋力や心身の活力が低下し、介護が必要になりやすい、健康と要介護の間の虚弱な状態のことを示す用語で、簡単に言えば、介護状態の一歩手前の段階と言えるでしょう。
しかし、介護段階に比べ、フレイルは、早く介入して対策を行えば元の健常な状態に戻る可能性が十分あります。しかし、逆に、放置すれば、生活の質を落とすだけでなく、さまざまな合併症も引き起こす危険があります。また、フレイルは高齢者だけに限ったものではありません。重症の疾患や障害、また、精神的ストレスによる心身障害で起こることも稀ではありません。

フレイルは大きく3つの種類があります。
①身体的フレイル:
運動器の障害で、筋力が衰える状態です。
②精神・身体的フレイル:
定年退職やパートナーを失ったりすることで、精神的にストレスとなり、うつ状態になることです。
③社会的フレイル:
加齢や、重症疾病に伴って社会とのつながりが薄くなることにより、独居生活や経済的に生活困難になる状態
です。
フレイルの 原因
フレイルは、以下のような加齢に伴う心身の変化と社会的、環境的な要因が合わさることにより起こります。
① 加齢に伴う活動量の低下と社会交流機会の減少
② 身体機能の低下(歩行スピードの低下)
③ 筋力の低下
④ 認知機能の低下
⑤ 易疲労性や活力の低下
⑥ 慢性的に管理が必要な疾患(呼吸器病、心血管疾患、抑うつ症状、貧血)にかかっていること
⑦ 体重減少
⑧ 低栄養
⑨ 収入・教育歴・家族構成など

https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/frailty/genin.html

上記の5つの項目のうち 3つ以上当てはまれば、フレイル です。
フレイル になるとどうなるの?
フレイルになれば、前述のように、心身ともに、要介護の状態になりやすいばかりか、様々な合併症を引き起こす危険があります。
フレイルによる合併症としては
① 認知症 :
最も起こりうる症状です。特に脳血管性の認知症が発症するリスクがかなり高いと言われています。また、逆に、認知機能の低下はフレイルの進行のリスクであると言われています。
② 栄養失調 :
食欲がわかない。何を食べてもおいしくない。食べる気力がなくなって、栄養失調になります。
③ 拒食症 :
上記の食欲の減退が進行すると、食べることに拒否反応を示すようになり、しいては死に至るケースも稀ではありません。
フレイルにならないようにするには?
前述したように、フレイルはしっかり予防すれば防げる状態であり、可逆性という特性から、なったとしても、訓練すれば、また元気な生活に戻ることは十分可能です。では、このフレイルにならないようにするにはどうすればいいのでしょうか。
【フレイル の 予防・対策】
フレイルを予防する方法は、大きく分けて、3つ あります。
① 栄養 :
偏った食事をせず、野菜などを中止とするバランスの良い食事をし、ある程度の水分を摂取することです。タンパク質をしっかりとりましょう。
② 運動 :
適度の運動を、毎日じゃなくてもいいので継続することです。
③ 社会活動 :
自治会やボランティア活動、趣味などに取り組むことです。

まとめ
高齢者はパートナーを失うことなどにより閉鎖的になりがちです。それを少しでも和らげるために勇気をもって取り組みましょう。
筆者

呼吸器外科・副院長
中尾 圭一
自己紹介
現在、診療科は、呼吸器外科・内科ですが、実際には様々な疾患の患者を受け持っています。私は、現在の小さな(50床)病院に勤務する前までは、急性期病院で呼吸器外科として数多くの手術、抗がん剤治療等を行ってきました。しかし、現在の病院は、地域包括病床が中心で、高齢者、認知症患者がほとんどを占め、他の大きな病院で急性期を過ぎたが、自立が困難なため、リハビリという名目で、転院されてこられる方も数多いのが現状です。末期癌や難治性の疾患ではないにもかかわらず、認知機能の低下の末、食事摂取不能となり、栄養失調で亡くなっていかれる患者を数多く看取ってきました。特にコロナ禍、後では、著名でした。しかし、今でも納得がいかず、どうして食べてくれないんだろう、どうしたら食べていただけるんだろう。フレイルの段階で対策しておけば助かったんではないのだろうかと日々悩む日が続いています。
患者様とどのように接しているか
たとえどんなにひどい認知症の患者様も、目上の患者様には敬意をもって接することを心がけています。
経歴
1986年 金沢医科大学 卒業
1987年 大阪医科大学(現:医科薬科大学) 胸部外科入局
1989年 南大阪病院胸部外科 勤務
1995年 大阪医科大学附属病院 勤務
1999年 星丘厚生年金 勤務
2001年 北摂総合病院 勤務
2016年 摂津ひかり病院 副院長 現在に至る
好きな言葉
私には2つの座右の銘 があります。
1つは「名医になるな。良医になれ。」 これは、私の父が生前、私に言った最期の言葉でした。父は、医療従事者とは全く縁のない一サラリーマンでした。しかも、医者が大嫌いで、それがあだとなって、58歳という若さで亡くなりました。その時、私は、研修医でした。
2つ目は、これは、私の医師としての師匠の言葉で、「この患者が、自分の身内だったらどうするかを、常に考えろ」 です。その師匠も、今では亡き人となりましたが、その意思をしっかり受け継いでいくつもりです。
ミールタイム パワーアップ食の活用方法
フレイルの予防・対策には栄養のバランスをとることが最重要のひとつで、それによって認知症を予防することができるのです。その点で、ミールタイムパワーアップ食は非常に有用だと思います。