今日から始める骨粗しょう症・フレイル予防の食事術(岩佐 沙弥)
骨がもろくなる骨粗しょう症は、骨折して初めて気づくことが多い病気です。また加齢に伴い心身が弱ってしまうフレイルとは切ってもきれない関係があります。しかし骨粗しょう症もフレイルも、栄養をしっかり摂ることや日々の生活で予防することができます。骨が折れる前に、そして体と心が弱ってしまう前に、今すぐ対策を始めましょう。
骨粗しょう症とフレイルの密接な関係
・骨粗しょう症とは?
骨は、古い骨が壊され、新しい骨が作られるサイクルを繰り返しています。このバランスが崩れ、骨を壊すサイクルが上回ると、骨の丈夫さを示す骨密度が低下します。骨密度が低下し、骨がもろくなり、軽い衝撃でも骨折しやすくなるのが骨粗しょう症です。骨密度が低下する主な原因は、加齢による女性ホルモン(エストロゲン)の急激な減少などのホルモン変化、栄養素の不足や運動不足・喫煙・過度な飲酒などの生活習慣の乱れ、そして甲状腺機能亢進症や慢性腎臓病などの特定の病気や薬剤の使用など、多岐にわたります。
・骨の健康と低栄養・フレイル
骨の健康は、筋肉や栄養状態と深く結びついています。フレイルによって活動量が低下し、低栄養になることで骨粗しょう症を発症することがあります。逆に、骨粗しょう症により骨折や痛みを引き起こし、活動が低下することでフレイルになることもあります。特に低栄養になると、筋肉の元となるタンパク質が不足し、筋肉量が減少します。タンパク質は筋肉を作るためだけでなく、骨の土台となるコラーゲンの材料にもなります。筋肉と骨密度は関係しているため、両方を支える栄養摂取が非常に重要です。
今日から食べて骨・筋肉を強くする食事術
骨粗しょう症とフレイルを同時に予防するためには、骨の材料(カルシウム、ビタミン類)と、筋肉の土台(タンパク質)をバランスよく摂取することが基本です。一つの食べ物から摂るよりも、いろいろな食べ物を組み合わせた彩りのある食卓を目指しましょう。
・積極的な摂取が推奨される食品
これらの栄養素を効率よく摂るために、以下の食品を積極的に食事に取り入れましょう。
・乳製品は、丈夫な骨を作る基本となる栄養素であるカルシウムが豊富で、吸収を助ける乳糖も含んでいます。
・魚は、カルシウムや、その吸収・定着を助けるビタミンDが豊富です。小魚は骨ごとカルシウムを摂取でき、サケやイワシなどの脂の乗った魚はビタミンDを効率よく摂取できる優れた食材です。
・緑黄色野菜・きのこ類は、骨の健康に必要な様々な栄養素を含みます。緑黄色野菜はカルシウムや、カルシウムの沈着を助けるビタミンKなどを含み、きのこ類はビタミンDを含む貴重な食材です。
・納豆・大豆製品は、筋肉の土台となるタンパク質が豊富です。特に納豆は骨の健康に重要なビタミンKを含みます。
さらに健康に!取り組みたい生活習慣
骨粗しょう症やフレイルを予防するためには、日々の生活習慣を見直すことも重要です。まずはほんの少しからでも、今日からできることをやってみましょう!
・日光浴
ビタミンDはカルシウムの吸収を助ける大切な栄養素ですが、食事から摂る以外に、太陽の光を浴びることで私たちの皮膚でも作られます。
夏は木陰で30分程度、紫外線や熱中症対策のため長時間の日光浴は避けましょう。
冬は日当たりの良い場所で60分程度、日差しが弱いため夏よりも長めの時間が必要です。
顔や手の甲など、少しでも肌を露出した状態で日光を浴びましょう。ただし、紫外線による皮膚への悪影響を避けるため、長時間の日光浴や日焼け止めの過度な使用には注意が必要です。
・運動習慣
運動不足は骨密度や筋肉量の低下に大きく影響します。骨は、適度な衝撃や負荷が加わることで、新しい骨を作るサイクルが活性化します。また、運動は筋肉をつけ、フレイルの予防にも直結します。
軽いウォーキングから、まずは1日10分でも外に出てみましょう。日光浴も兼ねることができるのでおすすめの運動です。地域の体操などに参加するのも良いでしょう。自分でできそうな片足立ちやスクワットなどを自宅で行うのも良い方法です。はじめは1種目の運動からでも行い、2週間続けてみてください。そうすればきっと習慣化できます、そこから少しずつトレーニングの種目を増やしていきましょう。
まとめ
骨粗しょう症、フレイルは密接な関係があります。そのどちらも予防には、栄養を十分に摂ること、日々の生活における工夫が大切です。バランスの取れた食事を目指し、適度な運動を心がけましょう。まずは一つだけでも、取り組んでみてください。習慣化できればきっと取り組みが増やせます!

筆者

非常勤医師 医学博士 岩佐 沙弥
自己紹介
整形外科、リハビリテーション科専門医です。30代の頃から、自身の将来のために1食10品目以上の食材を取り入れるようにしています!昔は運動習慣がなかなかつけられませんでしたが、まずは習慣化を目指したことで、今では1日1万歩、30分〜1時間は運動できるようになりました。
患者様とどのように接しているか
患者様の生活に合ったご提案を心がけています。すぐに取り組めるように、具体的な食事内容や運動内容を、診察時に個別にお伝えしています。
経歴
整形外科医、リハビリテーション科医として、大学病院、市中病院、クリニックなどで勤務。整形外科診療に加え、幅広い疾患による障害の治療や企業での健康管理を行っている。医学博士、整形外科専門医、リハビリテーション科専門医・指導医、日本医師会認定産業医。
現職:兵庫医科大学ささやま医療センター 非常勤医師
好きな言葉
しなやかに生きる
ミールタイム パワーアップ食の活用方法
1食で20mg以上のタンパク質を摂ることができ、彩りも良く理想的な食事です。