生涯、動ける身体に!-健康寿命を延ばすために-(原 淳)
人間は年齢を重ね、中年と呼ばれる40歳ころから何かしらの痛みや動作制限を来たします。これらの痛みはそれまでの仕事や趣味活動など繰り返しの動作とともに筋力や柔軟性の低下や骨の質の低下などが主に引き起こされます。その後40代、50代、60代と年齢を重ねるとともに、痛みは慢性化し徐々に仕事や趣味などの社会生活や通常の日常生活に支障をきたし始めます。では反対になぜ10代-30代くらいまではあまり慢性的な痛みを経験しないのか?それは幼少期や学生時代に積み上げた筋力や栄養が蓄えられていることによっています。ということは70代、80代を元気に過ごすためには40代からの食事習慣、運動習慣が大切になります。
人の身体は骨と筋肉や靱帯などによって支えられています。もちろん栄養がそれらの部位に行き渡るよう内臓の働きが重要なことは言うまでもありませんが、骨や筋肉を衰える前から維持し、強化することが必要です。
1.骨にとって大切な食事とは…
骨の主成分はリン酸カルシウムが約80%でタンパク質(コラーゲンなど)が約20%を占めています。強さとしなやかさが必要な組織です。従ってカルシウムの摂取とたんぱく質の摂取が重要です。また、食事から摂取したカルシウムを腸から吸収しやすくするビタミンDや、骨に定着させる役割を果たすビタミンKの摂取が重要です。ちなみにカルシウムは1日当たり800mgの摂取が必要とされています。
①カルシウムを多く含む食事:乳製品や小魚など
②ビタミンDを多く含む食事:キノコ類(シイタケ・きくらげなど)や
魚介類(サバ・イワシ・サンマ・マグロ・魚卵など
さらにビタミンDは日光(紫外線)を浴びると体内で大量に合成されるため、日陰でも良いので外出することも重要です。1日30分くらい浴びると良いでしょう。皮膚に対して紫外線はシミなど問題になりますが、骨にはとても良いので日陰での反射光や適量の日焼け止めを用いて外出することを心がけることをお勧めします。
最近の室内での日光浴はUV(紫外線)カットの窓ガラスの存在によりビタミンD合成には不足していることを知っておくと良いでしょう。
③ビタミンKを多く含む食事:海藻類や緑黄色野菜、納豆など
ただしビタミンKは血液を固まりやすくする作用があるため、心臓や脳・血管の病気で血液を固まりにくくする薬(ワーファリン)を内服している方は、医師や薬剤師に相談してください。
2.筋肉にとって大切な食事、大切なことは…
筋肉は主にタンパク質で形成されており成長や修復のために必須の栄養素です。筋肉の役割は身体を支えること、関節を動かすことで日常生活や仕事・趣味活動を行うために重要な役を果たしています。また、内臓器の動きや熱産生による体温調整、免疫細胞の働きにも役立っており、筋肉が身体活動や健康に過ごすためにとても大切な役を果たしています。よって筋肉を維持・向上させることが健康寿命を延ばすためにも重要です。
①タンパク質を多く含む食事:肉類(鶏むね肉・豚肉など)、
魚介類(鮭、マグロ、イワシなど)、乳製品、卵、豆類(豆腐・納豆など)など
②筋力トレーニング:摂取したタンパク質を筋トレして筋力を向上させます。
ただしトレーニングの過度な負荷は筋肉を破壊することになるため、回復のための休息も必要です。
尚、タンパク質の摂取のタイミングは朝食、そして運動後、そして夕食が良いとされており、運動前は消化吸収の問題もあり効果は期待できません。しっかりと運動を行いその後に摂取がお勧めです。
生涯動ける身体、健康寿命を延ばすためにさらにはウォーキングなどの有酸素運動で体力の向上や体脂肪・体重管理を行うとともに、骨・筋肉の健康のための食事摂取と屋外活動や筋トレを行い効果的でかつ楽しい食事の時間を作っていただくことを私は推奨し、そして自ら実践しています。

著者

横浜石心会病院 院長 原 淳
自己紹介
医師としての専門分野は整形外科で、なかでも脊椎関節疾患・スポーツ関連疾患を中心に診療しています。自分自身も日々体重管理や運動をしっかりと行いながら、食生活と向き合っています。食事を摂る時間ははとても楽しく幸せなひとときですので、その内容をゆっくり・しっかりと考えバランス不良や過剰カロリー摂取とならないように心がけています。
患者様とどのように接しているか
とにかく話をよくお聞きすることをしています。整形外科の患者さんは痛みを愁訴に来られる方が多いので、しっかりと問診や触診を行いどのような状況の痛みで困っているかを確認、画像検査などと合わせ診断をします。その上でどのような治療方法・対処方法があるかを患者さんと対話しながら説明し、治療方法を選択しています。
経歴
1995年 横浜市立大学医学部卒業
横浜市立大学医学部付属病院
1997年 国立横浜病院整形外科(現国立病院機構横浜医療センター)
1998年 藤沢市民病院整形外科
2002年 横浜市立大学医学部附属市民総合医療センター
2004年 ローマ大学IUSM留学
2005年 国際医療福祉大学熱海病院
2007年 小田原市立病院医長・上級医長
2013年 川崎幸病院整形外科部長・副院長
2019年 さいわい鶴見病院長
2023年 横浜石心会病院長 現在に至る
好きな言葉
「全ての道はローマに通ず」「寛容」
ミールタイム パワーアップ食の活用方法
ミールタイムパワーアップ食で先に述べた骨や筋肉にとってとても重要な役割を果たすタンパク質を効果的・理想的に摂取できます。骨を強くし、筋力を強化し動ける身体を作りましょう。













