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生活習慣病対策から低栄養予防へ食事を見直し(渡辺 克哉)

 若いころは、メタボや生活習慣病の対策などで野菜中心の食事が健康に良いといわれているが、年齢を重ねるにつれ、筋肉を作る力が弱くなってくるため、高エネルギー、高たんぱく質、また可能ならビタミンもしっかり摂ることができる食事に移行することが推奨されている。若いころと同じように、野菜中心の食事を続けていると、知らない間に痩せてしまう。

 また、あっさりした味付けを好むようになったり、一人で食事をしたり、食事自体が面倒といった理由から、菓子パン・麺類・お茶漬けなど簡単に済ませることも少なくない。こうした背景から、知らない間に低栄養になりがちである。


では、体重が減ってきた事に気づいたらどうすればいいのか。

まずは、食事を見直そう。

エネルギーのもととなる、3大栄養素 炭水化物・タンパク質・脂質を意識しよう

 ・主食(淡水化物)と主菜(タンパク質)をそろえよう。
 ・パン⇒パンと牛乳、パンと目玉焼きなど追加しよう。
 ・お茶漬け⇒お茶漬けと卵焼き、お茶漬けと納豆、魚の缶詰など追加しよう。
 ・麺類⇒揚げや卵、肉など追加しよう。

次は、食材や調理方法を見直そう。

選ぶ食材を考えてみよう

 ・お肉:脂身の多い、バラ肉、もも肉などを選ぼう。
 ・お魚:青魚や脂ののった旬の魚、脂の多い部位を選ぼう。
 ※加工食品には栄養表記がされているため、できるだけ栄養価の高いものを選択しよう。

調理方法を見直そう

 ・煮物⇒炒め煮にしたり、炒め物にしよう。
 ・焼き物⇒あげ焼きにしたり、揚げ物にしよう。
 ・洋食や中華料理などは脂質を多く使うため、少量で高エネルギーを確保できる。
 ・メニュー選択時に、和食⇒洋食・中華料理の割合を増やすことも効果的。

少ししか食べられないときは、

1日3回と決めずに、頻回食にしていこう

 軽食には、サンドイッチ・プリン・フルーツヨーグルト・菓子パン+水分補給も兼ねた牛乳やカフェオレなどがおすすめ。タンパク質・炭水化物を一緒に摂ることができたり、3食で不足しがちなビタミンやCaなどが補給できる。

油を利用しよう

 ごま油・練りごま・マヨネーズ・生クリーム・オリーブ油・亜麻仁油・MCTオイルなどを良質な油を利用しよう。煮物にごま油をかけたり、サラダにはマヨネーズやごまドレッシングなど、ノンオイルではくオイルドレッシングを使おう。

 コーヒーゼリーに生クリームを追加したり、コーヒーや紅茶などに生クリーム・亜麻仁油・MCTオイルなど入れてもいい。魚の味噌煮にごま油、焼き鮭にごまドレッシングやオリーブオイルをかけても意外と美味しい。自分好みの味を探して、いろいろ試してもらいたい。

栄養補助食品に頼る

 薬局の介護・栄養コーナーなどに売っている栄養補助食品を普段の食事に追加すると簡便に栄養をとれる。面倒な時や今日は食事が少ないかな?と感じる日などに利用してほしい。毎日メニューを考える余裕がない時や、家族と別で食事を作ることができない場合などにもおすすめ。自分の分だけ油をかけたり、栄養補助食品を利用してしっかり栄養を確保しよう。



 また、当院では、普段、噛む力や、飲み込む力が低下した方に対して食支援をしている。

 噛む力や飲み込む力が低下した場合の食事は、柔らかくするために煮る・蒸すなどヘルシーな調理法が多く使われることや、水分を多く含む傾向にあり、栄養価が低い傾向にある。

 お粥は、通常お米を炊く水分の2倍以上の水で炊き上げるため、同じ量だと、栄養量は1/2以下となる。他にも、食べやすい形状(刻む、ペースト状など)への加工時に、ミキサーやまな板に食材が残る事や、きれいに食べても、食べ終わったお皿にどうしても少し残ってるなど、口に入る食材の量は普通の食事に比べて少ない。

 飲み込む力が低下している方は、食べられる量が少ない事が多く、ほとんどの方が痩せている。飲み込む力は痩せることでさらに低下するため、少しの量でしっかりと栄養が取れる工夫が必要だ。

 例えば、油分は、食材がばらけるのを防ぐ働きがある。マヨネーズや、練りごま、ホワイトソース、アボカドなどの使用は、食べやすくすると同時にエネルギーUPを図ることができる。

 また、肉類や魚類が食べにくくなり、摂取量が減ってしまうことが多い中、たまご(温泉卵)や豆腐、はんぺんなどの食材は食べやすく、同時にタンパク質の補給ができる。

 パンは、フレンチトーストにしたり、クリームパンなどを選択。ごはんも、リゾットや、ドリア、卵がゆにするとよい。肉類や魚類もごはんに混ぜると食べやすくなり、栄養価もUPする。

水分を栄養が取れるものへ変更するのも一案である。

飲み物を美味しくアレンジ

 ・紅茶・コーヒーに、牛乳・砂糖・はちみつ・MCTオイル・生クリームなどを入れる。
 ・牛乳に、砂糖・はちみつ・きなこなどを入れる。
 ・ゆず茶、ジュースなどを選ぶ。

その他、ちょい足しで栄養UPするのもよい。

おかずにちょい足し

 ・卵焼き+マヨネーズ(卵液に入れるとふわふわになってカロリーUP)
 ・ねぎとろまぐろ+ごま油
 ・冷ややっこ+ゴマドレッシングやごま油
 ・カレーライスやハンバーグ+卵(温泉卵)

デザートにちょい足し

 ・ヨーグルト+ジャム・はちみつ・メープルシロップ
 ・プリンやカステラ+生クリーム
 ・アイス+練りごま・黒みつ・生クリーム

 ビタミンも不足しがちであるため、栄養補助食品などを上手く利用し、体重の推移を確認しながら、体重や栄養状態の維持改善を図ってもらいたい。

筆者

医療法人社団日翔会 理事長
医学博士 渡辺 克哉

自己紹介

 私が在宅医療に携わるようになって約17年になります。患者さんが自宅・施設など病院外で療養するために、ふだんから近くにいて、いつでも相談に乗ってくれて、どんな病気でもすぐに診てくれる、かかりつけ医師による医療、、、

 そんなプライマリ・ケアの充実が重要であると考え、グループ全体でよりよい在宅医療の提供ができるよう取組んできました。今では、医師・看護師・コメディカル・事務職員など約500名の仲間で、合計12拠点のクリニックを運営するようになり、患者さん・地域・仲間と「ともに”ある”」医療を信条として、プライマリ・ケアの充実に励んでいます。

患者様とどのように接しているか

 自分の健康状態をよく知ってくれている主治医の存在は、患者さんご本人にとって心強いものだと思っています。「住み慣れた環境で安心して自分らしく過ごしたい」という、患者さんやご家族のあたりまえのご希望に少しでも添えるよう、患者さん一人ひとりと向き合い身体のことだけでなく心のケアもする在宅医療、そこに私たちの存在意義があると考え、診療に取り組んでいます。

経歴

専門分野:総合内科・血液内科
日本プライマリ・ケア連合学会認定医
日本臨床栄養学会認定栄養医

昭和49年生まれ、大阪府出身。
平成13年
 近畿大学医学部卒業後、同大学血液腎臓膠原病内科入局。
平成14年
 医療法人春秋会城山病院、三島救命救急センターなどに勤務。
 その後、在宅医療のクリニックで訪問診療を経験。
平成19年
 吹田市にわたなべクリニックを開設。
平成18年
 医療法人社団日翔会を設立。理事長就任。

好きな言葉

ありがとう



ミールタイム パワーアップ食の活用方法

使用食材も多くたんぱく質や食物繊維もとれる為、食事準備が面倒な時にもオススメです