ロコモティブシンドロームと健康寿命:食事と運動の重要性(中川 良)
ロコモティブシンドロームとは?
日々の生活で、ふとした動作が難しく感じることはありませんか?その違和感が、実は「ロコモティブシンドローム」(以下ロコモ)の始まりかもしれません。ロコモは、骨、筋肉、関節などの「運動器」の機能が低下し、転倒や要介護リスクが高まる状態を指します。
ロコモは高齢者だけの問題ではありません。中年層でも運動不足や不適切な生活習慣によって、ロコモのリスクは徐々に高まります。進行すると、日常生活に支障をきたし、健康寿命を短くする可能性があります。そのため、早期の予防と適切な対応が不可欠です。
メタボとロコモの関係
メタボリックシンドローム(以下メタボ)とロコモには密接な関連があります(図1)。メタボによる体重増加は、膝や腰に負担をかけ、ロコモの進行を促進します。一方、ロコモによる筋力低下は運動不足を招き、さらに内臓脂肪の蓄積や血糖値の悪化を引き起こします。このような「悪化のスパイラル」を断ち切るためには、メタボとロコモの両方を同時に意識した取り組みが必要です。
研究では、メタボ陽性者がロコモを発症するリスクが高いことが示されています。例えば、50代でメタボとロコモの両方を持つ方では、血糖値や腹囲の値が特に高く、健康リスクがさらに増加することが分かっています。

予防のための具体策
①食事の改善:バランスが重要
極端な食事制限は、脂肪とともに筋肉も減少させてしまい、ロコモリスクを高めます。筋力を維持しつつ体重を管理するには、以下のポイントを押さえたバランスの良い食事が鍵です。
• たんぱく質をしっかり摂る
魚、大豆製品、鶏肉など、筋肉を維持するために必要な食品を意識的に取り入れましょう。
• カルシウムとビタミンDの強化
骨の健康を保つために、乳製品や小魚、きのこ類を活用してください。
• 抗炎症食品を積極的に摂取
緑黄色野菜やオリーブオイル、果物などは、炎症を抑え、筋肉の健康をサポートします。
②適度な運動:無理なく続ける
運動は、筋力を維持しロコモを予防する上で欠かせません。以下のような運動を日常に取り入れてみてください。
• 軽いウォーキング:30分程度の歩行を週に数回行うだけでも効果があります。
• 下半身強化のスクワット:転倒リスクを減らし、筋力を効率的に鍛えます。
• ロコモ度チェック:片足立ちや椅子立ち上がりテストで、現在の状態を確認しましょう。
③健康診断での早期発見
ロコモやメタボリスクを早期に発見し、適切に対策を講じるためには、健康診断の活用が重要です。当院では、ロコモ度テストとメタボ判定を組み合わせることで、受診者の健康状態を包括的に評価しています。こうしたデータを基に個別のアドバイスを行うことで、より効果的な予防策を提供しています。
健康寿命を延ばすために
ロコモとメタボの予防には、バランスの取れた食事、適度な運動、そして健康診断の活用が欠かせません。日々の習慣を少しずつ見直すことで、将来の健康を守る第一歩を踏み出すことができます。
健康は未来への投資です。ぜひ今日からできることを始めてみてください。
著者

理事長 中川 良
自己紹介
私は医療法人大宮シティクリニック理事長として、予防医療の推進に取り組む一方、千葉大学特任准教授として研究活動を行っています。臨床研修や大学病院勤務を経て、国内外での研究を通じて健康寿命延伸に努めてまいりました。
患者様とどのように接しているか
クリニックの持続可能な運営を考え、等身大の安定した医療を提供することを心がけています。時代にマッチした過不足のない予防医療の提供がその発展と継続に最も重要な要素と考えています。
経歴と現職
2005年: 聖マリアンナ医科大学 卒業
2005年~2007年: 聖マリアンナ医科大学病院 初期臨床研修
2007年~2018年: 東京慈恵会医科大学附属病院 消化器肝臓内科 助教
2015年~2020年: 東京大学医科学研究所・ハンブルク大学 共同研究
2020年~現在: 千葉大学大学院医学研究院 特任准教授
2010年~現在: 医療法人大宮シティクリニック勤務
2024年~現在: 理事長就任
好きな言葉
やってやれないことはない、努力と根性。
以前の上司より言われた言葉で、気持ちが負けそうな時に思い出し、それを乗り越える原動力にしています。
ミールタイム パワーアップ食の活用方法
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