高齢者が長く自分の口から食事をするために(小林 裕次郎)
1.高齢者の食事において大切だと考えること
もっとも根源的な永遠のテーマ、課題ですが、私がいつも考えることは極めてシンプルです。高齢者に限らずとはなりますが、各人様のお好きなものをお好きな時間に、お好きな量だけで召し上がっていただくことに尽きると思います。やはりお好きなものには理由があるでしょう。温度管理やもり付け方など、昔食べていた頃の思い出もよみがえるかもしれません。
専門職の医療従事者であれば「ただし、、、」と付け加えたいところだと思いますが、誤嚥予防のために食材にとろみをつけたり切り刻んだり、ついには、絶食をさせる行為や直ぐにでも胃婁や腸瘻にまで手術を行うことは私の中では、最も安易な選択であると同時にお金儲けにもなる手術であることも納得いかないです。高齢者に限らず食べたいものを口から摂取するという動物の本能に抗う行為は本質から逸脱すると考えるからです。
口腔内外の機能が落ちていくことは否めませんが残っている人の機能や骨格を活用して、特には筋肉も活用することについては十分に日々刺激すること(口腔体操など)は一定の意義を見出せると信じています。
2.私が普段の食事で心掛けていること
ベジファーストというかほとんど野菜ばっかりしか食べないことでしょうか。奥さんと二人暮らしですが、私だけウサギか馬のようにニンジンをポリポリ一本丸かじりなど。タマネギサラダが大好きなのも健康の秘訣なのかなと思っています。奥さんからは何がおいしいのといつも呆れられてますが、タマネギにはアリシンなどの機能性成分が含まれており、血中コレステロールや血圧を下げ血栓形成を抑える効果が期待できます。
また、奥さんの晩酌のお付き合いでは緑茶を飲みながら、いつも二人でポリポリとリス夫婦みたいにナッツ類もよく食べています。ただしジャンキーなものも好きですよ。フライドポテトを野菜というのは間違いでしょうけど(笑)。ナッツ類にはカルシウムやビタミン、食物繊維が豊富です。

3.少しでも長く口から食事を摂るためには
冒頭でも触れたことと重なりますが、やはりしっかりと「自身で食べたい」という意思を持ってもらうこと、そしてその意思を周囲のサポーターが上手に導くこと。
食べたいから食事の形態も考慮せずに何でもいいから提供するは禁忌ですよね。では、っていうと話が長くなりますが、やはり自身の体を十分に活用することだと思います。口周りに限定してしまうと効果の核心がブレます。なぜ、体全体かというと、口は消化管の入り口となります。消化器官と考えて、十分にかむこと、舌を動かすこと、タイミングを計って飲み込むこと、これらは全部食事を通してしかわからない内容であると同時に、人の機能を十分に生かせれば勝手に誰しもができることです。獲得した本能による食べるという行為を十分に発揮してほしいと考えます。
食事以外なら、いっぱいおしゃべりして、いっぱい笑いましょう。これも十分に口腔だけでなく表情菌のトレーニングになります。
まとめると、日常生活での人間の動きに着目してしっかりと機能維持の目的で動かし続けることが、食事を楽しむうえで不可欠です。毎日毎日好きなものを心置きなく楽しみましょう。
【口腔体操】
ここでは嚥下力強化を目的にすることや、人とのふれ合いの部分も含めた歯科医師による幅広い口腔体操の様子をご紹介します。
①まず、顔の上部からマッサージを開始します。指先だけでなく、手のひら全体を使って頭頂部、側頭部、頬部の順に、やさしくさすったり円を描くようにほぐしたりします。
②次に、頬部から耳下腺周囲、口輪筋(口の周りの筋肉)をマッサージします。特にあご先周辺は力が入りやすいため、十分に時間をかけて丁寧にほぐします。
③口角部をマッサージしながら、少しずつ口腔内へ指を入れ、頬部や口唇部を内側と外側から挟むようにしてマッサージを行います。
④指を頬粘膜の内側まで進め、頬を膨らませるようにゆっくりと圧を加えます。
⑤開口可能な方には、しっかりと口を開けてもらい、10秒程度の開口保持を目標に行います。
⑥舌を前方へ突き出してもらい、必要に応じて軽く牽引します。痛みや不快感が生じる場合があるため、反応を確認しながら無理のない範囲で実施します。

それでも、舌を前方に出せる方は、あえて出して上下の歯で噛んで舌を固定してこの状況で無理やり唾をのんでもらうトレーニングも実施します。
まずは、頭部や顔面部に触れてマッサージやさすることだけでも良いでしょう。口唇部などに触れることがとっても刺激になることは生理学の教科書にもよく出ていますね。医療従事者の方はぜひ、患者様にマッサージを指導してみてください。
筆者

自己紹介
大阪府交野市星田の小林診療所という田舎の内科の中にある歯科診療室で毎日口腔衛生管理業務にいそしんでいます。内科の診療所の中に歯科医がいるってどんな状態?って感じでイメージがつかない方も多いでしょうが、家族経営のため、呼吸器内科医の院長先生こと、父親と消化器内科医の弟先生と一緒に小さな診療所を運営しつつ同じ敷地内にある高齢者住宅(株式会社ホッコリアットホームという施設が二か所あり。代表取締役は母親です。)でデイサービスやホームヘルプも提供しています。
患者様とどのように接しているか
患者様とは常に本気で。認知機能低下は関係なし。
経歴
朝日大学歯学部付属病院で研修医を行う。その後は近畿中の一般歯科や訪問歯科で研鑽を積む。
ミールタイム パワーアップ食の活用方法
自身の身体の状態をきちんと把握した上で必要に応じて、便利なツールとして活用することをおすすめします。













