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糖尿病にならないための腸活、筋活方法(細井 雅之)

腸内環境と疾病

 この10年ほど、腸内細菌が非常に注目されています。ヒトの大腸内にはおよそ1000種類で38兆個にもおよぶ腸内細菌が生息していると見積もられており、この数は、ヒトを構成する体細胞数30兆個よりも多いと言われています。

 大腸内は腸内細菌が生息するのに適した嫌気環境であり、しかも栄養素が豊富に存在するのです。そしてこの腸の常在菌が我々の疾病発症に大きくかかわっているというのです。がん、糖尿病、肥満、アレルギー、心疾患、腎疾患にまで関わっているというのです。

 腸内細菌研究の第一人者 辨野義美(べんのよしみ)先生が2015年角川新書から「免疫力は腸で決まる」という著書をだされました。「免疫機能の6割は腸にあり、アトピー、うつ、肥満、がんが大腸と関係する。腸内細菌は脳、行動パターンを決める。2型糖尿病女性の腸内細菌は酪酸産生菌が減少している。」というのです。

 辨野先生は2013年朝日新聞出版社「大便力」には、「毎朝、便器を覗く人は病気にならない。大便は健康サイン」と記されています。そして以下の6項目によって腸内細菌パターンが決まるというのです。

1.年齢、性別;60歳以上、未満
2.排便回数;週に3回以上、未満
3.野菜摂取1日;350g以上、未満
4.乳酸菌入り食品、納豆を積極的に;摂る、取らない
5.軽く汗をかく運動;週に3回以上、未満
6.タバコ;吸う、吸わない

 「動物性油脂を多く含む食品は腸内悪玉菌をふやし、植物繊維は善玉菌を増やす。」と慶応大学入江潤一郎先生は報告されています(「糖尿病ケアプラス2023年夏季増刊」)。そして、辨野先生ご自身の自分の腸元気方程式として下記を提唱されています。

①ビフィズス菌を増やす。ヨーグルトを1日300g、できないときは乳酸菌入り飲料
②カサ増し食品を1日1つ。さつまいも、きのこ類、海藻
③出す力を増す。エスカレーターから階段へ

筋活におススメの食事

 高齢者のかたのサルコペニア、フレイルが問題になっています。予防対策は、薬ではありません。食事と運動です。食事に関しては、特にロイシンを多く含むたんぱく質の摂取が必要です。1食20gを目標に、1日3食均等にとった方が骨格筋合成速度は改善されるとされます(Mamerow MM et al. J Nutr.144:876-880,2014)。1食20gというのは、例えば以下のような朝食メニューです。

和食;白米150 (234kcal たんぱく3.8g)、納豆(86kcal 7.4g) さば水煮缶詰1/4缶(79kcal 9.4g) 合計399kcal 20.6g

洋食;食パン6枚切り1枚(146kcal 5.3g) 牛乳1杯(122kcal 6.6g) 鶏卵1個(99kcal 8.5g) 合計 370kcal 20.4g

腸活を考えヨーグルトもお勧めです。1カップ(70g)で39kcal たんぱく2.5gです。辨野先生のようにヨーグルト350gとればたんぱく12.5gも摂れます。

”自分の体重”で筋肉トレーニング

筋肉を落とさないためにはレジスタンス運動(筋肉トレーニング)がお勧めです(図1)。

図1 レジスタンス運動

 自分の体重を使って行うレジスタンス運動が効果的です。スロートレーニングという方法が筋肥大を効率的におこすことが報告されています。例えば以下のようなメニューがお勧めです。10~20回程度、楽にできる強さで結構です。

①スロースクワット;4秒かけてゆっくりと腰を下ろし、静止なしで、4秒かけてゆっくりと立ち上がる。筋肉に力がはいり圧迫され、血流が制限された状態が続くので、速筋線維の肥大を効率的におこす。
②かかと上げ下げ;椅子の背に手を置き、ゆっくりとかかとを上げてつま先立ちになる。限界までかかとあげたらつま先立ちの状態を5-10秒キープする。そしてゆっくりおろす。
③壁腕立て伏せ;壁に両手をつけ肘を伸ばし立つ。足は肩幅程度に広げ、両手は肩より少し低い位置に置く。肘を曲げた状態で5-10秒止めることでレジスタンス運動になります。

 辨野先生は排便活動のためには有酸素運動も必要とされています。腹筋群を鍛えるためにも、散歩、ジョギングがお勧めです。やや早めのスピードで1日15-20分、週に3日以上がお勧めです。

以上、まとめさせていただくと、

食事の目標は
● 野菜摂取1日350g以上、 さつまいも、きのこ類、海藻を積極的に 
● 乳酸菌入り食品、納豆を摂る 
● ヨーグルトを1日300g、できないときは乳酸菌入り飲料  
● 1食たんぱく質20gを目標に、1日3食均等にとる。

運動の目標は
● 週に3日以上、1日10-30回のゆっくりスクワット
● 週に3日以上、やや早足の散歩。1日15-20分程度

筆者

大阪市立総合医療センター
糖尿病内分泌センター長
糖尿病内科部長
医学博士 細井 雅之

自己紹介

 1960年大阪生まれ、関東の人とは違い、我が家には納豆を食べる習慣がありませんでした。中学生の修学旅行ではじめて朝食に納豆がでてきました。「糸をひいて、腐ったあの臭い」にびっくり。それ以降45年近く、納豆は自分にとって禁忌でしたが、腸活を知ってから食べるようにしました。

患者様とどのように接しているか

 入院患者さんにはまず十分と感じるぐらいのカロリーの治療食を提供します。不十分なら普段と同じ間食も買ってきていただきます。そのうえで、薬剤調節を行います。そうでないと、退院後にすぐ血糖上昇の方が今まで多くいました。

経歴

1987年
 大阪市立大学医学部卒業
1991年
 大阪市立大学医学部大学院修了(薬理学教室)
 米国ボストン大学心血管研究所留学
1995年
 大阪市立大学医学部第2内科 助手
1998年
 大阪市立総合医療センター 内科 医長
2007年
 大阪市立総合医療センター 代謝内分泌内科 部長、栄養部 部長
2014年
 大阪市立総合医療センター 糖尿病内分泌センター長、
 糖尿病内科部長、栄養部 部長
2022年 現職

好きな言葉

「病気を治すのはメスではなくフォークだ」

ミールタイム パワーアップ食の活用方法

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