糖尿病の食事療法の注意点(高井 昌彦)
糖尿病の食事療法の基本は食事のバランスと全体の量です。
炭水化物の過多
よく糖尿病の患者さんが『お昼ご飯は日本蕎麦にしています』や『おにぎり二個にしています。』と言います。印象としては糖尿病のことを考えているなと思われますがよく考えてみて栄養のバランスをみるとほとんどが炭水化物ばかりでタンパク質、脂質が足りません。
また「ラーメンとライス」や「うどんとお稲荷さん」などは炭水化物の重ね食いといって大量に炭水化物を摂ってしまいます。丼ものも炭水化物の摂取がおおくなります。お弁当であればバランスのとれた「幕の内弁当」がよいのですがあまり量が多いとエネルギーオーバーになります。
理想の食事バランス
バランスでは炭水化物のカロリー量は全体の50から60パーセントが推奨されています。残りのカロリーをたんぱく質と脂質でほぼ半々に分け合います。場合により炭水化物の量を減らしても良いとされています。
エネルギー量の設定
エネルギーの量は原則、理想体重(身長m×身長m×22kgたとえば身長160cmなら約56.3kg)×身体活動量kcalとなります。身体活動量の目安はデスクワークなどの軽作業では25~30kcal/kg 。立ち仕事などの中程度の作業では30~35kcal/kg。肉体労働などの重労働では35~40kcal/kgとしてやせ型や若い人では高い方を肥満や高齢者では低いほうを採用します。
しかし実臨床では例えば今まで3000kcal以上の食事をしてきた患者さんに1800kcalの指導をしても守れないだけではなく食事療法自体を放棄してしまうこともあります。その患者さんが守れる範囲に少し多めのエネルギー量を設定して始めたほうが良いことが多いです。エネルギー計算が患者さんにとって難しい場合は腹八分にするようすすめています。
高齢者ではフレイルの問題を考えるべきで特に理想体重に満たない患者さんはよりエネルギーを多めに設定すべきです。
極端な糖質制限は要注意
また血糖値を上げまいと極端に糖質制限をする患者さんも要注意です。実際の献立は管理栄養士におねがいするのが最善ですが、最近は宅配食も以前より良くなっておいしくなっているので活用するのも良いでしょう。
食事は一日三回、規則的にとるのが理想です。食事回数が少ないと一回あたりの量が多くなり食後の血糖値が高くなります。また夕食をとる時間が遅くなるとおなかがすくためか摂る量が多くなりがちです。そうすると翌日の朝の血糖値は高くなります。
単純糖を避ける
食事療法のもう一つの大事なことは単純糖(二糖類・単糖類)を避けることです。つまり甘いものをとらないことです。
砂糖は果糖とブドウ糖が一分子ずつ結合しており摂取して小腸にはいると直ぐに急速に分解吸収されます。糖尿病の人はインスリンの分泌が少ないだけでなく分泌が遅延します。そのため少ない量でも急速に血糖値が上昇します。大福を一つたべるだけで血糖値は200㎎/dl位上昇します。
ジュースやコーラなどの飲料水も血糖値の上昇は顕著であります。砂糖を大量に摂取すれば血糖値のコントロールは不可能であります。
私は甘いものの摂取は習慣性や嗜癖性があると思います。砂糖をなるべくとらないように、もしとっても少量ですむようにしていただく必要があります。
人口甘味料は確かに血糖値を上げません。人工甘味料だけで済ませられれば問題ありませんが、ついつい砂糖に手をだしがちです。甘いものは糖尿病の敵です。
アルコールの摂取の注意点
教科書てきには禁酒であります。アルコール自体は代謝産物がエネルギーをもっていますし醸造酒はかなり糖質を含有しています。またアルコールは食欲を亢進させます。
しかしアルコールを多く摂取すると肝臓での糖新生が抑制されるためインスリンやSU剤の服用時に低血糖をおこしますので要注意です。一般に血糖コントロールが良く合併症に問題のない場合は少量のアルコールはお目こぼしされます。ビール小瓶一本か日本酒一合とよく言われます。ほどほどにおねがいします。
筆者
自己紹介
昭和58年から平成2年まで横浜栄共済病院内科に勤務し、平成2年12月より高井内科クリニックを開業しました。現在は神奈川県医師会理事を務めるとともに糖尿病重症化予防(透析予防)の事業を県と鎌倉市と共に取り組んでおります。神奈川県糖尿病療養指導士の理事も務めており、コメディカルの育成にも関わっています。
患者様とどのように接しているか
患者様と良い信頼関係を築き、適切で丁寧な診療をしていくつもりです。
ご経歴
新潟大学医学部卒業後、新潟大学医学部附属病院第1内科、横浜栄共済病院内科を経て、平成2年12月に開業。院長。
好きな言葉
一期一会
ミールタイムパワーアップ食の活用方法
栄養バランスが取れていて、糖尿病の食事として
活用されるのもよいでしょう