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背骨を守る食事が健康長寿の秘訣(上田 茂雄)

私が日々の診療で患者さんと接していて強く感じるのは、「背骨の健康が人生の質を大きく左右する」ということです。脊椎は体を支える柱であり、同時に脳と体をつなぐ大切な神経の通り道です。背骨にトラブルが起これば、立つ・歩くといった基本動作だけでなく、家事や趣味、旅行といった日常生活全般に大きな制限がかかります。寝たきりや介護が必要になる原因の多くも、実は背骨や骨粗鬆症に関連しています。

背骨の健康と食生活

背骨の健康を守るには、手術やリハビリと同じくらい「毎日の食生活」が重要です。特に中高年以降は、低栄養・フレイル・サルコペニアが背骨の弱りを加速させる要因となります。筋肉や骨は一度衰えると回復に長い時間を要しますが、適切な栄養を意識的に摂取することで、その進行を防ぎ、健康寿命を延ばすことが可能です。

私は患者さんに「背骨を支える三本柱」として、①タンパク質、②カルシウム・ビタミンD、③抗酸化作用のある野菜や果物を意識した食事をすすめています。

●タンパク質:
筋肉の材料となる最も大切な栄養素です。肉・魚・卵・大豆製品を毎食少しずつ摂ることが効果的です。高齢者では食欲が低下しやすいため、プロテイン飲料やヨーグルトなどをうまく利用することも有効です。

●カルシウムとビタミンD:
骨の健康維持に不可欠です。牛乳や小魚、チーズでカルシウムを補い、きのこ類や日光浴でビタミンDを意識して摂取することが望まれます。骨折予防だけでなく、背骨手術後の骨癒合にも大きな役割を果たします。

●野菜や果物:
抗酸化作用により慢性炎症を抑え、老化や生活習慣病の予防にも役立ちます。緑黄色野菜、柑橘類、ベリー類など、彩り豊かな食材を取り入れると効果的です。

さらに「よく噛むこと」も重要です。噛むことで咀嚼筋が働き、姿勢保持に関わる筋肉が刺激されます。実際、噛む力が弱い方は背中が丸まりやすく、転倒リスクも高まることが知られています。食事を「栄養補給」としてだけでなく「リハビリの一環」としてとらえる発想は、背骨の健康を守るうえで非常に有効です。

食生活の課題

しかし現代社会では、一人暮らしの高齢者が急速に増えており、栄養の偏りが深刻な課題となっています。内閣府「高齢社会白書」によれば、2020年時点で一人暮らしの高齢者の割合は男性で約15%、女性で約22%に達しており、今後も増加が見込まれています。また厚生労働省の推計では、世帯主が高齢者である単身世帯の割合は2020年に約35%ですが、2050年には約45%に上昇すると予測されています。こうした現実を踏まえると、栄養の偏りを防ぐ仕組みが社会全体でますます必要とされていることが分かります。

診療の現場でも「自分のためだけに料理をするのは面倒」「買い物に行くのが大変でつい簡単な食事で済ませてしまう」という声を多く耳にします。結果として炭水化物中心の食事になり、タンパク質やビタミン・ミネラルが不足しがちです。これがサルコペニアや骨粗鬆症を進行させ、転倒・骨折から寝たきりへとつながる悪循環を生んでしまうのです。

このような現状において心強い存在となるのが、管理栄養士が監修した栄養バランス食を自宅まで届けてくれるサービスです。ファンデリー様の「ミールタイム」は、医療機関と連携しながら、糖尿病・高血圧・腎臓病など生活習慣病を抱える方や、低栄養リスクのある高齢者を栄養面から支援しています。とりわけ一人暮らしの高齢者にとっては、「自宅で手軽に、かつ安心して必要な栄養を摂れる」という点で大きな助けとなります。

外来で患者さんに「食事はどうされていますか?」と尋ねると、「コンビニやスーパーの総菜に頼ることが多い」という答えをよく耳にします。便利ではありますが、塩分や脂質が高く、タンパク質や野菜が不足しがちです。その点、ミールタイムは管理栄養士が栄養設計した献立で、カロリー・塩分・タンパク質などが適切に調整されているため、医師としても安心しておすすめできます。 医師、栄養士、患者さんが三位一体となって健康を守る。そのつなぎ役となるのが「ミールタイム」であり、これからの超高齢社会においてその価値はますます高まっていくと考えます。背骨疾患に限らず、多くの生活習慣病や老年症候群に対しても、栄養支援は欠かせない柱です。

骨を守ることは未来への投資

背骨を守ることは、単に骨を丈夫にするだけではなく、人生の楽しみや社会参加を長く維持することにつながります。食生活を整えることは、将来の健康投資であり、何歳からでも取り組むことができます。読者の皆さんもぜひ今日の食事から一歩踏み出し、未来の自分のために「背骨に優しい食生活」を実践していただきたいと思います。

筆者

社会医療法人信愛会 交野病院
信愛会脊椎脊髄センター
・センター長
京都大学脳神経外科非常勤講師
上田 茂雄

自己紹介

脊椎外科を専門とし、頚椎から腰椎まで幅広い疾患の診療・手術に携わっています。患者さん一人ひとりの生活の質を大切にし、日常生活に戻れる治療を心がけています。

患者様とどのように接しているか

私は診察の際に、まず患者さんの生活背景をうかがうようにしています。食事や運動習慣、家族構成まで含めて理解することで、最適な治療や生活改善の提案が可能になります。患者さんが「ここなら安心できる」と思っていただけるように、常に寄り添う姿勢を大切にしています。

経歴

佐賀大学医学部卒業後、同大学附属病院や関連施設にて脳神経外科・脊椎外科を研鑽。カナダ・トロント大学でのフェローシップを経て、現職を務めています。

好きな言葉

「無事これ名馬」(派手さよりも、長く健やかに走り続けることが最も価値あることだと考えています。)

ミールタイム パワーアップ食の活用方法

高齢患者さんの退院後食事サポートに活用。