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家族が気遣う在宅療養患者さんの食事と栄養(中村 幸伸)

どんなサポートが望ましいか

 在宅療養中の患者さんにとって、家族の気遣いとサポートは非常に重要です。特に食事と栄養に気を配ることは、患者さんの体調改善や健康維持に直結します。在宅で療養されている患者さんのためには家族がどのように食事と栄養に気を配るべきかについて考えてみましょう。

 在宅療養中の患者さんにとって、食事は治療の一環ともいえる大切な要素です。適切な栄養摂取は、免疫の向上や体力の回復につながり、治療の効果を高めることも期待されます。患者さんのために家族が気遣う事として、まずは患者さんの好みや制限事項を確認することが大切です。これにより、患者さんが食事を楽しんで摂ることができ、食欲を促進することが期待できます。

 家族は患者さんの食事状況を把握し、栄養バランスがとれた食事を提供することが求められます。医師や管理栄養士のアドバイスを受けながら、患者さんの健康状態に適した食事メニューを考えましょう。例えば、たんぱく質やビタミンが豊富な食材を取り入れ、バラエティ豊かな料理を提供することが大切です。

 また、食事の際には患者様が食べやすいように調理し、食欲を引き出す工夫も欠かせません。飲み込みの具合によっては一口の大きさを健康な方に比べて小さくする必要がありますし、ミキサーにかける等のさらなるひと手間を要する場合もあります。医療職の指示に従って食事形態を工夫しましょう。

 時には患者さんの体調や食欲が変動することも考えられます。その際には、柔軟に食事プランを調整し、必要に応じて専門家の意見を仰ぎましょう。適切なサポートうけることで、食事と栄養に関する問題に早期に対処し、患者さんの状態回復の後押しになるかもしれません。

 また、食事だけでなく、患者さんの心理的なサポートも同様に重要です。家族は食卓を囲んで患者様とコミュニケーションをとりながら、心のケアも行います。笑顔や温かい言葉が、患者さんの士気を向上させ、回復意欲を促すことがあります。時には、家族が一緒に食事をすることで、患者様に安心感や居場所の提供ができるでしょう。

フレイルと在宅療養

 在宅療養患者さんはフレイルに陥りやすいです。フレイル(虚弱体質)は高齢者において筋力や体力の低下が進み、日常生活に支障をきたす状態を指します。フレイルの予防には、適切な栄養摂取が不可欠です。以下に、フレイル予防のための栄養について詳しく述べます。

1.高タンパク質の摂取

 高齢者は筋肉量の低下が進みやすいため、十分なタンパク質を摂取することが重要です。良質なたんぱく質は、肉、魚、卵、大豆製品、乳製品などから得ることができます。タンパク質は筋肉の合成に寄与し、筋力を維持・向上させる役割があります。

2.ビタミンとミネラルのバランス

 ビタミンやミネラルは、骨や筋肉の健康に寄与します。カルシウム、ビタミンD、マグネシウムなどは骨密度を維持し、適切な筋機能をサポートします。バラエティ豊かな食材を摂ることで、必要な栄養素をバランスよく摂取することができます。

3.適切なエネルギー摂取

 適度なエネルギー摂取も重要です。過剰なエネルギー摂取は肥満を引き起こし、逆に不足すると栄養不足や筋肉の減少につながります。個々の身体活動レベルに応じて、バランスの取れた食事を心掛けましょう。

4.水分補給

 適切な水分補給も重要です。高齢者は脱水しやすく、これが筋力の低下や体力の減退につながることがあります。十分な水分を摂り、脱水を予防しましょう。

5.食物繊維の摂取

 食物繊維は腸の健康をサポートし、便秘や消化器系のトラブルを防ぎます。野菜、果物、全粒穀物などから十分な食物繊維を摂ることが重要です

 以上のポイントを踏まえ、バランスの取れた食事習慣を心がけることが、フレイル予防に寄与します。図にあるように、健康寿命を延ばすためにはフレイルの状態からさらに悪化し、要介護状態にしないことが大切です。いったん要介護状態となるとそこから状態を持ち上げることはなかなか難しくなります。

 医師や管理栄養士のアドバイスを受けつつ、個々の健康状態やニーズに合わせた食事計画を立てて健康で健やかな生活を長く続けられるようにしましょう。

筆者

つばさクリニック岡山 院長
医学博士 中村 幸伸

自己紹介

 2009年4月に岡山県で初めて在宅医療に特化したクリニックを開院し、現在岡山市と倉敷市の2拠点で訪問診療を中心にグループで24時間365日の相談・診療対応を行っています。病気や障害のために通院が困難な方が住み慣れた場所で、安心して療養が続けられることを第一に診療を行っています。

患者様とどのように接しているか

 患者さんの病気だけではなく、生活も診るという気持ちを大切にしています。

経歴

2002年 鳥取大学医学部医学科卒業
2002年 倉敷中央病院(教育研修部、循環器内科)
2007年 新宿ヒロクリニック
2009年 つばさクリニック開設
2011年 医療法人つばさ 理事長
2014年 つばさクリニック岡山開設
    (現職:つばさクリニック岡山 院長)
現在に至る

資格など

日本内科学会認定内科医、日本循環器学会専門医、日本在宅医療連合学会専門医・指導医、日本在宅医療連合学会評議員、岡山大学医学部医学科臨床教授、倉敷医師会理事、緩和ケアフォーラムin岡山 世話人、倉敷NST研究会 世話人他

好きな言葉

ネットワークとフットワーク

ミールタイム パワーアップ食の活用方法

身体状況に合わせ食事形態や栄養を工夫し楽しい食事環境で心身の健康を促進しましょう