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健康長寿のために知っておきたいフレイルとサルコペニア(横山 美矢子) 

年齢を重ねても、住み慣れた地域で自分らしく元気に暮らし続けるためには、「健康寿命」を延ばすことが大切です。しかし、年齢とともに体力や気力、心身の働きは少しずつ変化し、これまでできていたことが難しくなったり、病気やけがの回復に時間がかかったり、回復しきれず介護が必要な状況になることがあります。このように、健康な状態と要介護の状態の間(要介護の前段階)を「フレイル」といいます。

フレイルになると、転倒や入院、要介護などのリスクが高まります。しかし、フレイルは「年齢だから仕方がない」というものではなく、早めに気づき、生活習慣を見直すことで、改善が期待できます。そのため、フレイルを早期に発見し、適切に対応することが、健康寿命を延ばすために重要です。

フレイルは、「身体的」「精神・心理的」「社会的」の3つの側面から成り立っています。
・身体的フレイル:筋力の低下や低栄養など、“体の衰え”
・精神・心理的フレイル:意欲の低下や認知機能の低下など、“心の衰え”
・社会的フレイル:閉じこもりや人との交流の減少など、“社会とのつながりの衰え”

これらは互いに影響し合っています。例えば、筋力が低下すると外出する機会が減り、人との交流が少なくなります。その結果、気力も低下するという悪循環が生じ、フレイルが進行していきます。

今回はその中でも、身体的フレイルを構成する重要な要素である「サルコペニア」について考えます。

身体的フレイルとサルコペニア

身体的フレイルの重要な要因の一つが「サルコペニア」です。サルコペニアとは、加齢によって筋肉の量が減り、筋力が低下した状態をいいます。これまでの診断基準では、「筋肉量の減少」に加えて、「筋力の低下」または「歩く速さなどの身体機能の低下」のいずれかがある場合にサルコペニアと診断されていました。しかし、2025年にアジアサルコペニアワーキンググループ(AWGS2025)の診断基準が改訂され、「筋肉量の減少」と「筋力の低下」を重視し、歩行速度などの身体機能の低下は、サルコペニアが進行した結果として考えられるようになりました。筋肉は体を動かすだけでなく、代謝や免疫など全身の健康を支える重要な役割を担っています。そのため、生涯にわたって筋肉の健康を守ることが重要視されるようになりました。また、筋肉の衰えは高齢になってから急に始まるものではなく、中年期から少しずつ進んでいきます。このため、新しい診断基準では、50~64歳の中年層も診断の対象となり、早期発見・早期対策の重要性が示されました。筋肉の健康を守ることは、健康長寿への第一歩なのです。

まずは自分でチェックしてみましょう

サルコペニアの可能性を自宅で簡単に確認できる方法として「指輪っかテスト」があります。自分の両手の親指と人差し指で輪を作り、利き足ではない方のふくらはぎの一番太い部分を囲んでみるだけの簡単な方法です。ふくらはぎが指輪っかでちょうど囲める場合や、さらに隙間ができる場合は、サルコペニアの可能性があります。気になる場合は、医療機関で相談してみましょう。早めに気づき、生活習慣を見直すことで、予防や改善が期待できます。

フレイル、サルコペニアを予防する生活習慣

①食べる

サルコペニアやフレイルを予防するためには、十分な食事量(エネルギー)とたんぱく質を摂ることが大切です。たんぱく質は1日あたり体重1kgにつき約1.0g以上(体重60kgなら60g以上)が目安です。ただし、腎臓の病気がある方は主治医に相談してください。また、筋肉を効率よく維持するためには、朝・昼・夕の3食で、できるだけ均等にたんぱく質を摂るようにしましょう。

高齢になると食事量が減り、ご飯や麺類だけの食事に偏りがちです。毎食、肉・魚・卵・大豆製品などの主菜を意識して取り入れることが大切です。朝食に卵や納豆、ヨーグルトを加えたり、味噌汁に豆腐を入れたりするだけでも、手軽にたんぱく質を補うことができます。食事量が少ない方は、きな粉や粉チーズなどを料理に加えたり、必要に応じて栄養補助食品を上手に利用することも一つの方法です。

また、おいしく食べ続けるためには、口の健康も大切です。定期的に歯科を受診し、入れ歯を使用している方は調整を受けましょう。

②動く

筋肉を維持するためには、スクワットや椅子からの立ち上がり運動などの筋力トレーニング(レジスタンス運動)が効果的です。さらに、ウォーキングやバランス運動を組み合わせることで、体力や歩行能力が向上し、転倒予防にもつながります。掃除や庭仕事、買い物などの日常生活も立派な運動です。「エレベーターではなく階段を使う」「一駅分歩いてみる」など、生活の中で体を動かす機会を増やしましょう。筋肉は使わないと少しずつ衰えてしまいます。大切なのは、頑張りすぎることではなく、自分に合った運動を無理なく続けることです。毎日の積み重ねが、筋肉を守り、健康長寿につながります。

③つながる

家族や友人との交流、趣味や地域活動への参加は、外出する機会が増えるだけでなく、会話や食事を楽しむことにもつながります。その結果、体を動かす機会が増え、心の健康や筋肉の健康を保つことにも役立ちます。

「食べる」「動く」「つながる」。この3つを日々の生活で意識することが、フレイルやサルコペニアの予防につながり、健康長寿への第一歩となります。まずは今日から、できることを一つずつ始めてみましょう。

参考:荒井秀典 編 『フレイルハンドブック ポケット版』ライフ・サイエンス社出版

筆者

特定医療法人竹下会竹下病院
老年内科 横山 美矢子

自己紹介

老年科医として、高齢者医療を専門に、フレイル・サルコペニアや認知症を中心とした診療に携わっています。

患者様とどのように接しているか

どのような方も、年齢を重ねるにつれて、さまざまな病気や体の変化と向き合うようになります。歩んできた人生も、大切にしていることも、一人ひとり異なります。

老年科医として、一人ひとりの人生の歩みに思いを寄せ、大切にしていることを尊重しながら、その人らしい生活を支える医療を提供できるよう、日々診療に取り組んでいます。

経歴

高知大学医学部卒業
現職:特定医療法人竹下会 竹下病院 老年内科

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