オリーヴ樹の恵を活かした地中海型食生活の普及と和食への取り組み(地中海和食)(横山 淳一)
肥満2型糖尿病、メタボリック症候群の食事療法では摂取エネルギーを減らし、体重の減量が継続的に得られるとともに、肥満症の予後を左右する動脈硬化の危険因子に対して好影響をもたらす食事内容が求められる。このような観点から、地中海型食事療法(地中海食)を勧めている。
地中海食は油脂としてオリーヴオイルを用い、そのために豆類、緑黄色野菜がおいしく摂れる地中海沿岸地域の伝統的な食事で、心血管障害を予防するのに適していることが報告1)されてきたが、肥満の減量にも有用である研究成果2)が報告されメタボリック症候群、肥満2型糖尿病に最も勧められる食事法である。
科学的に行われた有名な研究で、肥満者(平均年齢52歳、平均BMI 31)322名を無作為に、低脂肪食、地中海食、低糖質食の3群に振り分け、2年間の長期にわたり減量効果が比較検討された。低脂肪食群ではカロリー制限をした上で総脂質比率30%、飽和脂肪比率10%を指導した。地中海食群では同様のカロリー制限の上、脂質比を35%以上に、使う油脂はオリーヴオイルとし一日30~45gの摂取を指導した。野菜の摂取量が増え、肉類は減り、魚介類が増え、3群間で食物繊維量の摂取量が最も多く、飽和脂肪に対する一価不飽和脂肪の比率が最も高かった。低糖質群ではカロリーや脂質摂取量を制限せずに糖質は20gを目標に抑えるよう、また、蛋白質、脂質は植物性の食品から摂るよう指導した。
体重減量成果では、3群とも減量したが、地中海食群と低糖質食群では低脂肪食群に比較して減量幅は有意に大きかった。とくに地中海食群ではリバウンドが少なく無理なく減量が得られている(図1)。

また、この研究に参加した糖尿病患者36名では地中海食群で低脂肪群に比べて空腹時血糖値、インスリンレベル、HOMA-Rにより好影響がみられた。さらに、地中海食群だけに、心血管障害のマーカーである高感度C反応性蛋白レベルの有意低下が見られた。このような長期にわたる食事法の減量効果を科学的に分析した研究はこれまでにはなく、地中海食は肥満の食事療法として有用であることが証明されたことになる。
地中海食では油脂としてオリーヴオイルを用いるため、オリーヴオイルの脂肪酸構成の約75%を占める一価不飽和脂肪酸であるオレイン酸の摂取量が多くなる。飽和脂肪酸に対してオレイン酸の摂取量の比率が高くなると動脈硬化の大きな危険因子であるインスリン抵抗性、血清脂質のプロファイルに好影響をもたらす。オリーヴオイルの脂肪酸構成は、他の植物油である菜種油、大豆油、ひまわり油などの種子油がオメガ6系多価不飽和脂肪酸リノール‘酸が主体であるとの相違点である。その他にも、オりーヴオイルはオリーヴの実をそのまま圧搾してできる果実油であるため、多種多様の抗酸化物質が多く含まれている。また、自然の風味があり、豆類、緑黄色野菜を美味しく食べられるため、おのずとそれらの料理が増える。こうした点から満腹感を得やすく、肥満症に地中海食を勧めると遵守率も高く、減量のリバウンドが少ないと思われる。
地中海食は穀類、魚介類、根野菜が多く、和食の食材との共通点が多くみられる。伝統的な和食にもオリ-ヴオイルを油脂として使う地中海型の原則は受け入れやすく、地中海和食と命名して普及に努めている。
1)deLorgeril M, Salen P, Martin JL, et al: Mediterranean diet, traditional risk factors
and the risk of cardiovascular complications after myocardial infarction; final report of the Lyon Heart Study. Circulation 99:779-785, 1999
2) Shai I, Shwarzfuchs D, Henkin Y, et al: Weight loss with a low-carbohydrate,
Mediterranean, or low-fat diet. N Eng J Med359:229-341, 2008
オリーヴオイルを油脂として使うため各地域の食材がうまく生かされ、栄養学的にもバランスの良い、古代から続く伝統的な地中海型食事(地中海食)は、現代人の健康長寿にとって良き規範とされ、2011年にユネスコの無形文化遺産に登録された。地中海食は地域の健康、生活の質の向上に寄与した点とともに、美味だけでなく適量のワインを傾けながら、時間をかけてゆっくり食事するスタイルはコミュニケーションの形成に好都合である点も強調されている。地中海食は、日本人が抱えている肥満、生活習慣病の対策にも好都合な栄養学的に特筆すべき点は多い。
筆者

院長 医学博士 横山 淳一
患者様とどのように接しているか
糖尿病をはじめ、代謝性疾患を抱えている患者さんがほとんどです。したがって、患者さんの生まれ育った環境、現在おかれている社会的な側面を考慮しながら、管理栄養士、看護師とともに患者さんに寄り添った生活指導を心がけています。
経歴
オリーヴァ内科クリニック 院長
1973年千葉大学医学部卒業。東京慈恵会医科大学内科学(糖尿病・代謝・内分泌 部門)教授を定年にて退任後、2013年に東京都世田谷区駒沢にて糖尿病、代謝・内分泌領域専門のオリーヴァ内科クリニックを開設。診療の傍ら、オリーヴの樹の恵みをライフスタイルの改善に生かす指導を行っている。日本糖尿病学会認定糖尿病専門医、指導医。日本内分泌学会認定内分泌代謝専門医。主な著書『南イタリアの家庭料理―地中海式ダイエットの原点、美味と健康にあふれた食卓-』(保健同人社刊)『イタリアに学ぶ医食同源-真の美味を求めて―』(中央公論新社刊)『こんなにおいしくていいの?!医師と料理家がすすめる糖尿病レシピー』(筑摩書房刊)『炭水化物を食べながらやせられる!地中海式 世界最強の健康ダイエット』(ソフトバンク出版)『オリーヴのすべて』(共著)(幸書房)など。
好きな言葉
食は味、文化 そして 健康
Eat well, Stay well, the Mediterranean Way
ミールタイム パワーアップ食の活用方法
幅広い年齢層、いろいろな病態に対応した多彩なメニューがある。食材の買い物が困難な、特に高齢者には好都合であると思います。













